【占い小説】「アラサー女子たちの占い活用術」 <病魔> 第5話

2019 12/15
【占い小説】「アラサー女子たちの占い活用術」 <病魔> 第5話

<病魔>

「えっ!?引っ越し??」

久しぶりに3人で集まった時に、真由美が東北に引っ越すと聞いて、順子と里奈は驚いた。

「うん、彼の実家で同居する事になったの」

真由美は心から幸せそうな表情でそう言った。

真由美が付き合っていた彼から突然別れを切り出され音信不通となったものの、里奈が紹介した電話占いの力で復縁したというのは、里奈も順子も聞いていた。そしてそのままトントン拍子で結婚まで進みそうだという話も聞いていた。

「でも東北とはね~」

「仕事、どうするの?」

「もともと辞めて独立するつもりだったから。ちょうど良いタイミングかなって。ネットビジネスを立ち上げてみようと思ってたの。だから場所も時間も選ばずにできるし、お義父さんのお世話しながらでも働けるかなって」

真由美は生き生きしていた。

「それで結婚して同居なのね。結局うちより早くゴールインしちゃうじゃん!」

順子はそう言って笑った。

「式は東京で挙げるんでしょ?」

里奈がそう聞くと、真由美は

「うん、二人ともお世話になった会社も友人も東京が中心だから、東京でやるよ。ただ、彼のとこはお義父さんが遠出できないから、向こうでも簡単なセレモニーだけやるんだ」

と答えた。

「寂しくなるけど、遊びに行くからね!」

里奈がそう言って、珍しく幸せな話題ばかりの飲み会となった。

里奈はとても幸せだった。

2人の友人が、里奈が勧めた電話占いのおかげで幸せになったのだ。

軽い気持ちで始めた電話占いで、効果があったのでそれからも何かと占ってもらって自分の行動の指針としてきた里奈だったが、順子と真由美の恋愛成就は本当に嬉しい効果だった。

「私も本格的に婚活か恋活、始めないとな・・・」

そう呟いて、里奈自身も電話占いで恋愛相談をしようかな、と考えながら帰宅し、眠りについた。

翌朝、里奈はスマートフォンの着信音で起こされた。

画面には「お父さん」と表示してある。いつも実家から電話がかかってくる時は母なのだが、珍しいな、と思って電話に出た。

里奈の父は、里奈に「落ち着いて聞くように」と神妙な声で伝えてから、母が乳がんになった事。ステージ4の末期で治る見込みがほぼ無い事を告げられた。

里奈の頭は一瞬真っ白になり、父の声が遠のいていくのを感じた。

ハッと我にかえり、父に「分かった。とりあえず、そっち帰るから」とだけ伝えて、電話を切り、実家へと急いだ。

母は里奈が予想していたよりもずっと元気そうだった。

顔色も悪くなかった。

母ががんに侵されているなど、信じられなかった。

「・・・・・・」

里奈は、母を目の前に、何と声をかけたら良いのか分からず、気まずい沈黙が流れた。

「ごめんね」

母が、ポツリと呟いた。

「い、いや、なんでお母さんが謝ってんの?一番辛いの、お母さんじゃん」

答える里奈の声が震えていく。せり上がってくるものがあり、里奈は声を詰まらせた。

手術を受けてももう遅いし、抗がん剤も手遅れだという事で、母は自然に任せる事を希望していた。痛み止めだけ服用し、あとは病魔が自分の命を終わらせるのを静かに待ちたいという希望だった。

1%でも希望があるなら、手術でも治療でもやったら良いじゃん」

里奈は、母の意向を私に伝えた父にそう言って泣いて喚き散らした。

里奈の八つ当たりを、父は静かに受け止めた。

「抗がん剤の治療はものすごく辛いし痛いし、副作用に苦しむんだよ。母さんはもう手術に耐えられるほど体力もないって先生が言ってたし。だから、どうしようもないんだって」

気付けば居間に弟が降りてきて、里奈をなだめるようにそう言った。

里奈は、やり場の無い思いをどこにぶつけたら良いか分からなかった。

その時、頭に占いの存在が閃いた。

里奈は早速電話占いで母のがんについて占ってもらおうと思った。

すがる思いで電話をかけ、健康や寿命についての占いを得意とする占い師に相談した。

しかし、電話の向こうで占い師が言葉に詰まるのを感じた里奈は、次に占い師から発せられる言葉を聞きたくないと本能的にそう思った。

その占い師はタロットカードを使って占いをおこなったが、「良くないカードが出ている・・・」と、まるで独り言のように呟いて、その後しばらく絶句した。

それからひとつひとつ言葉を選ぶように慎重に里奈に話し始めた。

「お母さまのご病気ですが、これに関しては明るい未来は見えていません。快方に向かうとか、治るとか、そういったポジティブな未来は示唆されませんでした。運命を静かに受け入れる事しかできない、私に言える事はただそれだけです・・・」

里奈は、何か裏切れたような気持になってガックリと落ち込んでしまった。

占いの力を頼れば、何でも解決できて、どんな状況も打開できるものだと信じていた。それでも占い師は無情にも、どうしようもない残酷な現実を里奈に突き付けただけだった。

絶望した里奈は、ひたすら涙にくれた。

母にどのように接したら良いか分からない、どんな顔をして、何を話したら良いのか、これから母とどう向き合うべきなのか、里奈は途方に暮れてしまった。

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