【占い小説】「アラサー女子たちの占い活用術」 <救いの言葉> 最終話

2019 12/15
【占い小説】「アラサー女子たちの占い活用術」 <救いの言葉> 最終話

 

<救いの言葉>

電話占いにすがった里奈に、無情にも母の病を受け入れるしかないと言い放った占い師のせいで、里奈はすっかり自暴自棄になってしまった。

もう占いなんて信じられない、二度と電話なんかかけるもんか!

そう思い、里奈はたった独りで母の病気と向き合い、どんどん落ち込んでいった。

家族と辛さを分かち合う事もできたかもしれない。しかし、里奈は父や弟とどのように接したら良いかさえ、もう訳が分からなくなってしまっていた。

日がな一日、ボーっとする事が多くなり、笑顔は消え、職場でも心配されるようになった。

そんな里奈の元へ、順子や真由美からは、相変わらず不定期的に近況報告などの連絡が入っていたが、里奈は返信できなかった。

そのうち、里奈の事を心配した順子から直接電話がかかってきて、里奈は母のがんの事、信じてきた占いに裏切られたような気分になった事など、順子に話した。

堰を切ったように言葉が流れ出て、同時に涙も流れた。ヒックヒックとすすり上げながら順子に何もかも話した里奈は、幾分か気分がスッキリしたようだった。

「里奈、そんな大変なことが・・・。辛かったね・・・」

順子は静かにそう言って、里奈の気持ちに寄り添った。

この時、順子はただひたすらに里奈の気持ちを吐き出させて、自分は聞き役に徹しようと思っていたのだが、里奈の方から「私、もう占いを信じられないって思っちゃってるんだけど、でも、きっとこれが真実で、お母さんはもう治らなくて・・・でも、そんなの・・・耐えられなくて・・・誰に頼ったら良いのかな・・・やっぱり占いしかないよね・・・。ねぇ、順子はあれからも占いしてる?占い、もう一度信じても良いと思う?」と聞いてきた。

順子は里奈の話を聞きながら、それは電話をかけた占い師の伝え方もあまり良くなかったかもしれないな・・・と思っていた。順子は元来ポジティブに物事を捉える性格なので、占いなども良い部分だけ信じて、悪い事に関しては必ず打開策やラッキーアイテムを聞き、それを実行する事で自分の運命を良くしていこうと思うようにしていた。

順子は、どうしても占いの内容が納得いかないものだった場合は、別の占い師にも電話をかけて、セカンドオピニオンのような形でアドバイスをもらい、よりポジティブな方を参考にするようにしていたのだ。

だからこそ、順子は、里奈の話を聞いて、他の占い師ならば、あるいはより良い道を示してくれたかもしれないのに・・・と思っていたのだった。

順子は里奈に、その想いを伝えた。

占い師といっても色々な占い師がいるし、占う方法も様々だから、別の占い師の意見を聞いてみても良いのではないか、それによって里奈の気持ちもまた変わるかもしれない、と。

里奈は順子の意見を聞いて、もう一度、電話占いを頼ってみようと思えるようになった。

それでも里奈は一抹の不安を抱え、闘っていた。

もしまた絶望的な事を言われたらどうしよう・・・もう何の希望も無いなんて事になったら・・・

そう思うと震えが止まらなかった。

それでも里奈は勇気を出して電話をかけた。

順子に勧めてもらって、順子が信頼している占い師に電話をかけてみたのだ。

順子も、彼女ならば里奈の心の傷を癒してくれるに違いないと思い、里奈に勧めた。

電話口から聞こえてくる声には温かさがあり、その占い師は里奈の話をとても親身になって聞いてくれた。ただ聞くだけでなく「それは辛いですね」など相槌を打ち共感しながら聞いてくれた。

そして占いに入った。しばしの沈黙が、里奈の心拍数を上げ、一気に不安な気持ちが襲ってくる。

占い師は電話の向こうで小さく溜息をついて、口を開いた。

「確かに、お母さんの病気は、もう手の施しようもない段階に来てしまっているのね・・・」

里奈は、またしても絶望の淵に立たされたような気がして、目の前が暗くなりかけた。

しかし、次の瞬間、「でも・・・」と続いた占い師の言葉に、里奈は救われる事になる。

「でも、カードには悪い事ばかりが示されているわけではない。幸福とか、家族の愛情とか、心の安らぎとか、そんなメッセージも出ているの。暗い未来だけが広がっているわけじゃない。あなたはお母さんと幸せな時を過ごすべきなの」

「幸せな時を・・・?」

里奈はそう聞き返した。

「そう。あなた、お母さんががんだと分かってから、一度もお母さんに会いに行っていないでしょ?」

驚いた。里奈は一度もそんな事は伝えていなかったのだが、見抜かれてしまったようだ。

占い師は、その後、里奈に母に会いにいくよう勧めた。その際にどのような言葉を交わせばよいのか、何を母にしてやれば良いのか、母は何を望み、どのように最期の時を過ごしたがっているのか、それを示してくれた。

さらに占い師は「それから、お母さんは家に戻ってくるから、否応なく顔を合わせる事になりそうよ」と言った。

その言葉通り、母は治療や手術を受けないという事で、早々に自宅に戻ってきた。

里奈は、占い師のアドバイスを参考に、懸命に母に「普段通り」に接した。そして涙は見せずにとにかく笑って過ごすこと、楽しい話題で盛り上がる事、そして母に伝えたいことは全て伝えることを意識した。

母もいつも笑っていた。

楽しく穏やかな家族水入らずのひと時を過ごし、里奈も次第に心が穏やかになっていくのを感じた。そして、いずれやってくる母との別れの日を受け入れる心の整理も徐々についてきた。

順子が心配して何度か連絡をくれたし、引っ越してしまった真由美も事情を知って里奈に連絡をしたが、2人の優しさも助けとなって、里奈の心境は落ち着き、2人にも「大丈夫」と心から言えるようになった。

順子のアドバイス通り、占いの力を借りて良かった・・・

里奈はそう思い、全てが良い方向に回り始めるきっかけをくれるのはいつも占いだったと思い出して、改めてあの時親身に話しを聞いてくれた占い師に感謝するのだった。

 

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